図書情報室

お嬢さんと嘘と男たちのデス・ロード ジェンダー・フェミニズム批評入門

お嬢さんと嘘と男たちのデス・ロード ジェンダー・フェミニズム批評入門

15/キ

北村紗衣/著

文芸春秋

「批評というのは、ちょっとした実験的な飛翔を許してくれるジャンルだと思う。」と著者はいう。
本書に収録された論考は、すべてフェミニスト批評だ。セクシュアリティの規範から外れた観点から映画や小説を分析し、著者が求める面白さや日々感じていることに重きが置かれている。
第3章のタイトル“男たちのデス・ロード”は、フェミニズムに肯定的なアクション映画として注目を浴びた作品のタイトルをもじったものだ。マンスプレイニングに関するコラムに始まるこの章は、レッド・ツェッペリンの楽曲やタランティーノ作品等における男らしさの矛盾や虚構に痛快に切り込んでおり、特に興味深い。
映画や小説はそれだけで楽しめるが、飛翔の先に新たな視界がひらけるかもしれない。

フェミニズムってなんですか?

フェミニズムってなんですか?

05/シ

清水晶子/著

文春新書

フェミニズムの基本姿勢と目標は「女性が性別を理由に不当な扱いを受ける、また不利益をこうむることに対して声をあげること。そして女性たちがその生の可能性を広げられるように社会を変革していくこと」と著者は言う。フェミニズムは、何を考え、何を主張し、何をしてきたのか。この本では、それについて、スポーツ、アート、性暴力、婚姻、ケア、リーダーシップ、家族、インターセクショナリティ等、様々なトピックで学んでいく。インターセクショナリティのトピックでは、人種・民族・宗教・文化・セクシュアリティなどにおいて、マイノリティの立場にある人たちが、マジョリティである人たちとは違う経験をしていることを心に留める「インターセクショナルな視点」の重要性が説かれている。その視点が、差別の働きを理解して差別をなくす第一歩となり、女性としての生き方や存在を考える上で、より豊かで多様な可能性を開いてくれる。

フツーの生活プロジェクト ―クィアでないクィア生活―

フツーの生活プロジェクト ―クィアでないクィア生活―

78/ワ

作:ミツヨ・ワダ・マルシアーノ/國永 孟  画:早川宏美

さいはて社

家族は父と母が揃っているのが「フツー」、異性を好きになるのが「フツー」、女なら家事ができて「フツー」……。社会の「フツー」は、“こうあるべき”へと形を変えて、私たちの生活のあらゆる場面にしみこんでいる。
だけど現実に生きる人は、もっと多様で、個性的で、「クィア」*だ。
本書では、ゲイ・レズビアン、シングルマザーなど、社会が求める「フツー」にぶつかりつつも、それに迎合せず、「わたし」として生きる人々の暮らしをマンガで描く。
「フツー」に当てはまらない私たちの暮らしは確かに「クィア」かもしれない、でもそんな「クィア」な日常を私たちは「フツー」に生きている――冊子に描かれる他愛もない日常は、そんな抵抗の言葉としても聞こえてくる。ところどころに京都の風景も。

*「クィア(queer)」とは:「奇妙な/風変りな」の英訳。規範的なセクシュアリティに当てはまらない人の自称としても使われる。

月刊 We Learn vol.821

月刊 We Learn vol.821

M/ウ

公益財団法人日本女性学習財団

We Learn は2002年に『女性教養』から改題してからも既に20年、男女共同参画のための専門情報誌として情報を発信し続けている。
今号の特集は「戦争とフェミニズム」。研究レポートでは、これまで戦時性暴力の中でも不可視化されてきた「男性被害」に焦点が当てられ、なぜ、男性被害をジェンダーの視点から論じ、戦時性暴力の議論に包摂することが重要なのかが述べられている。
女性や子どもだけでなく、男性もまた戦時性暴力の被害者となりえることに焦点が当てられるようになったのは極めて最近のことであり、今後、戦時性暴力を考える上でも注目すべき視点と言える。
タイトル「We Learn」には学びへのきっかけづくりや全国的な情報交換の場として使ってほしいという思いが込められており、このような新しい視点もトピックとして特集される。「We Learn」をぜひ学習会等に活用してほしい。

クィア・アクティビズム はじめて学ぶ<クィア・スタディーズ>のために

クィア・アクティビズム はじめて学ぶ<クィア・スタディーズ>のために

78/シ

新ヶ江章友/著

花伝社

「クィア」とは、性的マイノリティや既存の性カテゴリーに当てはまらない人々の総称である。「性の多様性」の理解に向け、日本でも「クィア・スタディーズ」への関心は高まっているが、その理論や思想をそのまま日本の文化にあてはめて理解しようとするには少し無理がある。
本書は、アメリカで誕生した「クィア・スタディーズ」の歴史を政治的・文化的背景を見ながら整理しつつ、その上で、異なる社会・文化を持つ日本の中で、どのように接続し、新しい理論や運動を生み出せるのかを考えるための足掛かりになることを目的として記された。
大学の授業の教科書としてまとめられた本書は、「クィア・スタディーズ」を初めて学ぶ人にも理解できるよう章立ても工夫されており、入門書としてお薦めの一冊である。

ハッシュタグだけじゃ始まらない 東アジアのフェミニズム・ムーブメント

ハッシュタグだけじゃ始まらない 東アジアのフェミニズム・ムーブメント

01/ア

熱田敬子・金美珍・梁永山聡子・張瑋容・曹曉彤/編

大月書店

女性への暴力や性差別に声をあげる#MeToo運動が全世界的に巻き起こり、とりわけ韓国の盛り上がりは記憶に新しい。しかし韓国に限らず隣国の東アジアで、どんな人が、どんなアクションを繰り広げているのか、知らない人も多いのではないだろうか。
本著は近年の中国・韓国・台湾・香港で起こったフェミニズム運動を、鮮やかな写真と解説、各国のフェミニストたちの生の声と共に紹介する。SNS上の「#(ハッシュタグ)」によるアクションに終始せず、足を使って集い、顔を合わせ、言葉を交わしながら着実に社会に働きかける様は、“オフライン”で繋がり行動することの力強さを訴えかけてくる。第二次世界大戦期の日本軍による戦時性暴力を問う各国の動きも紹介。歴史を踏まえながら、社会を動かす仲間として共に手を取り合うためには?
本書から学び、想像したい。