図書情報室

いばらの道の男の子たちへ  ―ジェンダーレス時代の男の子育児論―

いばらの道の男の子たちへ  ―ジェンダーレス時代の男の子育児論―

08/オ

太田啓子、田中俊之/著

光文社

現代の日本社会では、女の子には自分のために「自分らしく生きていい」というメッセージが伝えられるようになったのに対し、男の子にはどう対応すればいいのかについてほとんど議論されていない。
「トキシック・マスキュリニティ」とは、「有害な男らしさ」「自他を害する過剰な男らしさへの執着」という意味である。これからの未来を生きる男の子が、自分も他人も傷つけないような生き方ができるようになるために、親はどのように男の子と接すればよいのか?
「テレビやYouTubeから、子どもが男女に関する歪んだ価値観を刷り込まれないか」等の親たちのモヤモヤする思いに、著者たちが対談形式で答える。

女の国会

女の国会

101/シ

新川帆立/著

幻冬舎

本書は、政治家を軸に、働く女性が直面する困難を描いたミステリー小説である。ここでは、典型的な男性優位の世界である政界における、女性たちの理不尽な経験が浮き彫りにされ、政治を志す女性にとっての様々な障壁がリアルに描かれている。
世界経済フォーラムが公表した「ジェンダー・ギャップ指数2024」の日本の順位は146か国中118位、依然として低く、その大きな原因が政治の分野における女性の少なさであることは、よく知られるようになった。
しかし、そのような状況は、男性を含むすべてのジェンダーの人々にとって、良い状態とは言い難い。だからこそ、この本を読んで共感してほしい。現状を変える力を持つために。

女性はなぜ男性より貧しいのか?

女性はなぜ男性より貧しいのか?

05/ウ

アナベル・ウィリアムズ/著

晶文社

メディアでは、女性は「ケチなくせに浪費家」、男性は「有能な投資家」であるように描かれることが多いという。また、「女性の賃金を低くするのは違法だから賃金差別は存在しない」「賃金格差は教育で解決できる」等々、ジェンダーとお金にまつわる誤った認識は枚挙にいとまがない。本書は、そのような通説を覆し、格差の根本原因を探り、平等に向けた具体策を提案する。
どちらのジェンダーも平等に富を得るためには、制度的、政治的、法的な変化が必要だ。そのうえで「ジェンダーの平等は、(一方が得をすると必然的に他方が損をする)ゼロサムゲームではない」と著者は強調する。女性が平等を求め、努力し、今より多くを手にしたとしても、そのために男性が何かを失うわけではないのだ。

10代のための性の世界の歩き方

10代のための性の世界の歩き方

43/サ

櫻井裕子/著

時事通信社

本書では、生理や性欲、避妊、SEXのことまで漫画を通して10代の子どもにも分かりやすく細かく説明されているため、大人に直接聞きにくい性の悩みや疑問についての情報を得ることができる。しかし知識や情報があっても、実際に性に関する思いがけない事態が起こった時に一人で対応することは難しい。だからこそ、「誰かとつながる力」をもってほしいと筆者は願う。子どもたちを性の被害者にも加害者にもしないために、本書を糸口に、まずは大人同士や子どもたちとの対話から関係性を作っていくのはどうだろう。

困難を抱える女性を支えるQ&A 女性支援法をどう活かすか

困難を抱える女性を支えるQ&A 女性支援法をどう活かすか

05/コ

戒能民江、堀千鶴子/編著

解放出版社

2024年4月に施行された「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」(女性支援法)は、性暴力、性的搾取、生活困窮、孤立など、女性であることにより困難に直面した人を支えるための新たな法律である。その基本理念として、本人の意思を尊重した支援による福祉増進、人権擁護、男女平等を明記し、関係機関や民間団体と協働することにより、早い段階からの切れ目のない支援を目指している。
本書では、女性支援法を基軸に据えながら、先駆的な取り組みを行ってきた民間の支援団体の事例を取り上げ、いかにして一人ひとりの意思に寄り添い、制度の狭間を補う柔軟な支援を実現させるのかについて考察する。

烏帽子と黒髪 中世ジェンダー考

烏帽子と黒髪 中世ジェンダー考

03/ノ

野村育世/著

同成社

中世の人々の装いは、今の私たちとはかけ離れたものであった。大人の男性は常に烏帽子を身につけ、階級ごとのドレスコードは絶対、女性の髪の長さは美醜の基準であると同時に身分の基準でもあったという。やんごとない身の上であればあるほど他人に顔を見せることも大声で話すこともタブーとされた。虫愛づる姫君ほどに自己を確立しているのでない限り、相当堅苦しく、さぞや生きづらかったのではと想像するのは現代人ゆえか。
内侍のように公職に携わる女性も存在したが、彼女たちとそれ以外の女性との意識の差はどうだっただろう。どのような気概をもって勤め、装うことを楽しんでいただろうか。烏帽子と黒髪にまつわる史料や物語から中世の人々のジェンダー観を読み解こうとする1冊である。