図書情報室

女であるだけで

女であるだけで

105 ケ

ソル・ケー・モオ/著 吉田栄人/訳

国書刊行会

夫フロレンシオを誤って刺殺してしまった主人公のオノリーナ。20年の禁固刑を受け収監されていたが、恩赦により刑務所を後にするところからこの物語は始まる。
メキシコ先住民のオノリーナは、スペイン語をあまり理解できず、読み書きも知らない。フロレンシオには、14歳の時に400ペソと靴1足、金のネックレスと引き換えに「買われ」、妻ではなく所有物であった。以来繰り返されたありとあらゆる暴力が、この恩赦を取り付けるために奔走した若き女性弁護士デリアとの接見により明らかにされていく。あまりに淡々と語られる痛みは壮絶で、想像力が追い付かない。簡単に分かった気にさせてくれないのだ。
女であるだけで、苦しみを受ける。暴力にさらされる。未だにそれを普遍と感じてしまうことも悔しい。これは、遠い世界のことではない。

草 日本軍「慰安婦」のリビング・ヒストリー

草 日本軍「慰安婦」のリビング・ヒストリー

95 ジ

キム・ジェンドリ・グムスク/著 都築寿美枝・李昤京/訳

ころから

漫画と文学を組み合わせた「グラフィック・ノベル」と呼ばれる表現方法を用いた本作は、太平洋戦争中、日本の植民地下におかれた朝鮮で、「慰安婦」として日本軍から性暴力を受けた朝鮮人女性の人生を描いたものだ。
「慰安婦」と聞くと、国家間の政治問題として捉えられることが多い。しかしこの物語を読むとそこには、基本的人権を傷つけられた、名前を持った一人の女性の生きざまがあることがわかる。「女だから」という理由で学校に通えず、強制連行により14歳で「慰安婦」となり、解放後も偏見の中、苦しみ生き抜いてきた女性の過酷な経験が、静かだが力強い筆圧で描かれ、圧倒される。
作中で、元「慰安婦」女性の身を削るような語りに、著者は葛藤する。語らせることは、「過去の傷をえぐり出す」ことに等しい。聞いてもいいのか、なぜ聞くのか、語りをどう受け止めたらいいのか。著者自身が自問自答する姿から、語り部が寿命を迎える今、記憶をどのように引き継ぐべきか、考えさせられる。そして、日本人としてどのようにこの声を聴くのか、問わずにはいられない。

ジェンダーについて大学生が真剣に考えてみた

ジェンダーについて大学生が真剣に考えてみた

05/ジ

一橋大学社会学部佐藤文香ゼミ生一同/著 佐藤文香/監修

明石書店

「女ってずるくない?」「男ってずるくない?」「リケジョはあるのにリケダンはないの?」「弁当男子はあるのに弁当女子はないの?」といった性差に関わる素朴な疑問を、社会学部のゼミ生が「大学生の視点」で回答するQ&A集。1つの項目について、ホップ・ステップ・ジャンプの3段階のレベルの回答があり、徐々に難しくなるので、ホップやステップまで読んで、まずは基本的なことを押さえるもよし!具体的な例と裏づけられた知識で説明されているので、ジェンダーのことを知る機会がない学生にも社会人にもおすすめ。

ハラスメントの境界線 セクハラ・パワハラに戸惑う男たち

ハラスメントの境界線 セクハラ・パワハラに戸惑う男たち

74/シ

白河桃子/著

中公新書ラクレ

通称「パワハラ防止法」が2020年6月に施行された。著者は、会社にとっても個人にとっても「ハラスメント意識のアップデート」は欠かせない事であり、ハラスメント研修をして「あれはダメ、これはハラスメント」とNGワードを覚え込ませることではなく、「ハラスメントを容認する風土」を変えていくことだという。
セクハラ事件の分析や、営業職の女性、弁護士へのインタビュー、#MeeToo運動以降の日本のハラスメント対策の事例の紹介などを通して、"これからの働きやすい会社のかたち"を提案する。

フルキャリマネジメントー子育てしながら働く部下を持つマネジャーの心得

フルキャリマネジメントー子育てしながら働く部下を持つマネジャーの心得

52/タ

武田佳奈/著

東洋経済新報社

これまで女性の働き方は、キャリア重視で仕事に邁進する「バリキャリ」か、生活を優先して働く「ゆるキャリ」のどちらかでという二元論で語られてきた。しかし、近年そのどちらにも意欲的に取り組みたいと考える女性の働き手が増えてきた、と著者は指摘する。この新しい価値観を持つ女性たちを「フルキャリ」と呼ぶ。彼女たちの働き方を理解し、活躍を促すには、管理職たちの価値観にも変化が必要となってくる。
管理職の多くが女性の部下の育成に自信が持てないのはなぜか。なぜ彼女たちのマネジメントを難しく感じるのか。ここでは、組織マネジメントの成功例や企業の実践例から見出していく。
自分のことを信じて、成長と貢献を期待してくれるマネジャーの存在が、彼女たちの活躍を後押しする。本書は女性の活躍を最大限に引き出したい、現場のリーダーや人事担当者のためであるとともに、自分がどう生きたいのか考える、当事者たちのための本でもある。

ワンピースで世界を変える!専業主婦が東大安田講堂でオリジナルブランドのファッションショーを開くまで

ワンピースで世界を変える!専業主婦が東大安田講堂でオリジナルブランドのファッションショーを開くまで

68/ブ

ブローレンヂ智世/著

創元社

男性的な骨格の人がレディース服を着ようとすると、肩幅が合わなかったり、丈が足りなくて不格好になったりして、着ることをあきらめている人が多い。
体型や骨格が男性的な人が着ても美しく見えるデザインのレディース服があれば、こうした辛さを解決できるのでは、と始めたのが「メンズサイズのかわいいお洋服」づくり。筆者の起業した「ブローレンヂ」の始まりだ。
金無し、ノウハウ無し、人脈無しのないない尽くし。
ただ彼女には「性別に限らず着たい服を着て、性別にとらわれない世の中を!」という熱い思いだけがあった。
そのエネルギーこそが、フローレンヂの危機を幾度となく救う。
起業からファッションショーまでの彼女の奮闘記。
がむしゃらな姿と真っ直ぐな思いにこちらが力づけられた。