図書情報室
未来からきたフェミニスト 北村兼子と山川菊栄
03/ミ
花束書房
大正・昭和初期に日本の女性で初めて法律の世界に飛び込み、世界を舞台にジャーナリストとして短い生涯を駆けた北村兼子。庶民の視点にこだわり、社会を科学的に分析しながら人間の平等を求め続けた山川菊栄。
切れ味鋭い言葉で社会の矛盾を突き、女性差別を非難し、同時代の女性たちと盛んに議論を交わし、考えや立場が違う相手を批判したり理解しようと努めたりしながら、時代の変化を見つめ、誤りがあれば正し、変化し続けた。
その共通点が多いふたりをめぐり、現代のフェミニストたちがエッセイや論考を綴り、語り合う。残念ながら、ふたりが生きた厳しい時代からあまり進歩していない現在。まるで未来からやってきたかのようなふたりの言葉から、明日へのヒントを探してほしい。
なぜ男女の賃金に格差があるのか 女性の生き方の経済学
57/ゴ
慶応義塾大学出版会
社会では多様性が重視されるようになったが、労働市場の男女格差は依然として存在している。
2023年にノーベル経済学賞を受賞した著者は、研究の中で、「なぜ、さまざまな職業で女性は男性に後れをとってしまうのか」という問いについて、その理由を集め続けた。
邦訳初となる本著では、アメリカの過去一世紀にわたる各職業のデータを分析し、女性たちがどのように「仕事」と「家族」のあり方を選択してきたのか、キャリアを阻害する隠された要因や障壁、労働における男女の格差是正に向けて何が重要かについて考察する。原題は、「キャリアと家庭:女性たちの平等に向かう100年の旅」。男女の柔軟な働き方を論理的に後押しする一冊。
フェミニスト男子の育て方 ジェンダー、同意、共感について伝えよう
08/ウ
明石書店
著者は、小学生の男の子2人の母親で臨床心理学者である。ある日著者は、性加害のニュースを聞いて「性犯罪者たちをなぜ社会のシステムが保護してきたのか」と考え込む。そして、このニュースを息子には聞かせたくないと思った瞬間、「私たちも発育期の少年をかばっているのでは?」と気づく。子どもを守るという名目で子どもを保護し、その結果、大切な話をする機会を失ってしまうと。
親が自身のジェンダー規範に対する認識を高め、本書のツールを使いながら、ジェンダー・同意・共感を対話によって男の子に伝えていくことで、フェミニスト男子に育てようと呼びかけている。
ガールズ・アーバン・スタディーズ 「女子」たちの遊ぶ・つながる・生き抜く
05/ガ
法律文化社
現代都市はどのように成り立っているだろうか。“ジェンダー”の視点は重要な都市の構成要素であるが、普段はほとんど意識しない。本書は「若年女性」を通して現代の都市を捉え、「遊ぶ」「つながる」「生き抜く」の3部からジェンダーの視点で考察することにより既存とは異なるリアリティを明らかにする。女性が安心して消費者となれる場所とは?SNSでつながる人間関係と都市空間とは?都市で暮らす女性の不自由とは?今を生きる私たちにとって「都市」とはネットを通じて誰もが繋がることができる。その中で「女性をする自由」と「女性を“させられる”不自由」が複雑に絡み合い、現代の都市が構築されているのだ。都市を読み解くことで現代女性の姿が浮かびあがる、面白い1冊。
性差別の損失 なぜ経済は男性に支配され、女性は排除されるのか
05/ス
柏書房
人類最初の経済は狩猟採集システムだが、その頃から男女間には不平等があった。充分な食料を得た者が体格、体力、認知能力に長け、“しきたり”により栄養摂取の機会を奪われた者は劣っていく。人間に社会ができた初期から、女性を経済学と経済政策に組み込まない問題が存在したのだ。人類が女性をどう扱ってきたかは歴史の暗部であり、そこに光を当てるのを拒否してきた。だが、それを示す膨大なデータは、救済への道標でもある。具体的な方法を提示し、家父長的な搾取のない世界経済のために、今行動しようと著者は呼びかける。
「イクメン」を疑え!
64/セ
集英社新書
「イクメン」には「育児をする男性は格好良い」という価値観がある。著者はこの言葉に違和感を持ち、研究者として、日米の保育事情を比較し、映画やビジネス書に潜む「イクメン」の文化イメージを分析した。映画『クレイマー、クレイマー』で、男性が仕事と育児の板挟みになる様子を見ると「つらそう」と感じる。だが、現実でこの両立で苦しむのは、多くの場合女性である。「イクメン」の独り歩きを防ぐには、女性の視点が必要である。子どもをケアする事が持つかけがいのない意味に向かい合ったとき、はじめて「父親」になれるのではないかと説く。