図書情報室 図書情報室

78/タ

あなたが気づかないだけで神様もゲイもいつもあなたのそばにいる

平良 愛香/著

学研プラス

 牧師の家庭に生まれた著者は、自分が「男の人が好きだ」と気づくが、当時のキリスト教で主流であった「同性愛は罪だ」という考え方、周囲からの差別に苦悩する。やがて、日本で初めてゲイであることを公表して牧師となった著者が、信仰を捨てることなく、自分らしく生きること選ぶまでの半生を描いている。
 後半では、大学で非常勤講師として講義を行っている著者が、性的少数者についての基礎的な知識をわかりやすく解説している。その解説は、性的少数者だけにかぎらず、さまざまなマイノリティへの偏見や差別について平易な言葉で語られており、マイノリティについてわかりやすく学ぶことができる。

05/ニ

日本のフェミニズム 性の戦い編 Since 1886

北原 みのり/責任編集

河出書房新社

 本著は、日本におけるフェミニズムの歴史が端的にまとめられている良書である。もっとも力強く語られているのは、フェミニズムが、これまで日本では誤解され続けている"一部の女性のためだけの運動"ではなく、あらゆる人々の「性の尊厳」を考えるための思想であるという点である。
 ところで、2017年に発表されたジェンダーギャップ指数(男女平等ランキング)をご存知だろうか。日本は世界114位、過去最低記録を更新している。一方、世界ではカナダのトルドー首相、米国のオバマ元大統領、「ハリー・ポッター」の俳優のダニエル・ラドクリフが自らをフェミニストと自認し、ここ数年、フェミニズムの持つイメージの大きな変化を感じることも多い。今こそ、老若男女を問わず、この1冊を通じてフェミニズムをより深く知ってほしい。

母・娘・祖母が共存するために

信田 さよ子/著

朝日新聞出版

 これまで出版された「母娘関係」の書籍のほとんどは心理的問題に帰結している。しかし、本書では、家族・世代という視点が入り、高齢者激増の社会を反映して、「母・娘・祖母」の3世代を視野に、団塊世代に象徴される母親の困難さにも言及している。また、女性だけの問題としないために、父親(夫)である男性や、息子と母の関係に触れているのも特筆すべき点である。
 筆者が本書で繰り返し重要だと伝えるのは、自分がどの立ち位置にいるかというポジショナリティ。立場によってとらえ方・感じ方が変わるからである。つまり、客観的に正しい唯一の視点があるわけではないのだ。筆者は言う「どの立場から読むのかを、自分に問いかけてもらいたい。」と。母娘問題に関する総集編といえる本書を、ぜひ、「立場」を問いかけながら読み進めていただきたい。

100/ワ

早稲田文学増刊『女性号』

川上 未映子/責任編集

早稲田文学会

 例えば「作家」と「女性作家」を使い分けるように、あるモノやコトにわざわざ「女性」の一語を付けて語られることは、いまだに多い。その必要性に疑問を感じることもしばしばであり、文芸誌である早稲田文学が「女性号」と銘打って刊行されたことに、正直「なぜ今この特集か?」と感じたことは否めない。
 だが、巻頭言で編者は言う。「2017年現在における、ありとあらゆる分野における女性についての表現活動と諸問題を今号に網羅し記録しておきたい」と。「女性」と「書く」がどのような関係にあり、さらにそれらがどう読まれ、読まれないのか。「人間を書く」ことと「女性を書く」ことはどのように同じで、どのように違うのか。そして現在、女性の創作をめぐる状況はどのようにしてあるのか―。そんな動機で編まれた束幅3㎝超の本書には、内外の新旧さまざまなジャンルの作品がぎっしりと詰め込まれる。懐かしい作家に再会し、またお気に入りに加わる作品との出会いもあるだろう。秀逸な装丁も楽しみである。

73/ヨ

シングル女性の貧困 非正規職女性の仕事・暮らしと社会的支援

小杉礼子/鈴木晶子/野依智子/(公財)横浜市男女共同参画推進協会/編著

明石書店 

 近年「女性の貧困」は、様々な媒体で取り上げられるようになった。しかし、その内容は、シングルマザーや老後の貧困が定番であり、また、就業支援といえば、これらの層に加えて女子学生や子育て後の再就職、あるいは正社員女性のキャリアアップが対象となることが多い。だが、それ以外に所属する女性へ視点が抜け落ちているのではないか。本書は(公財)横浜市男女共同参画推進協会が中心となって、これまでの女性への就業支援の取り組みの中から浮かび上がってきた「若年層でもシングルマザーでもない非正規職の女性」という層にスポットをあてる。
声なき声を、丹念な調査研究を経て、世の中に向け、見えるようにする試みだ。支援の枠から取り残されたシングル女性の貧困という新たな視点から、ドラスティックに男性中心の企業通念や、働く場の意識を変えるきっかけとなることを期待したい。

81/ナ

漂流女子 にんしんSOS東京の相談現場から

中島 かおり/著  

朝日新書

 タイトルの「漂流女子」とは、思いがけず妊娠し、相談先を探しながら孤立している女子のことを指す。筆者は妊娠した背景にかかわらず、妊娠している女性の戸惑いを受け止め、産む産まない、産むのであればどうやって育てるのか等、自身が納得して道を選択できるよう関係機関と連携しながらサポートを行っている。
 本書に登場する女性たちのSOSの背景には、暴力や虐待、貧困等の日本の社会問題が潜んでいる。彼女たちの多くは複数の課題を抱えながら社会資源とつながることなく孤立し漂流しているのだ。彼女たちが社会で孤立せず、力をつけ再び海に出ていくために、同じ社会を生きる私たちにできることは何なのかを投じている。