図書情報室

抵抗への参加 フェミニストのケアの倫理

抵抗への参加 フェミニストのケアの倫理

05ギ

キャロル・ギリガン/著 小西真理子・田中壮泰・小田切建太郎/訳

晃洋書房

フェミニズムに新たな視点をもたらし「ケアの倫理」の原点とされる名著『もうひとつの声で』の出版から40年が経つ。本書は『もうひとつの声で』出版後、称賛の一方で本意ではない解釈の数々と格闘してきた著者が、自身の半生や研究を語り、“ジェンダー化された正義とケアの論争”に応答したものだ。
ケアの倫理とは、私たちが相互依存の中で生きているという前提に基づいた関係的な倫理のことであり、共感し、他者のこころを読み、協働し、相互理解を促す人間の能力だ。それらの能力は人の成熟を示す重要な指標となりえる。しかし、それらを女性らしさと結びつけ、能力の価値が低く見積もられる家父長制社会の中で、人はその能力を喪失するのだとギリガンは訴える。
人は人間関係の中でケアにより生かされている。ケアの倫理の理想である「誰ひとり、取り残されたり傷つけられたりしない」未来のために、私たちは何を考えるのだろうか。

それでも女をやっていく

それでも女をやっていく

102/ヒ

ひらりさ/著

ワニブックス

本書は、これまでライターとして無数の女性の人生を聞かせてもらってきた著者が、初めて、自分自身とジェンダーとセクシュアリティをめぐる葛藤に向き合うエッセイ集だ。
女らしさへの抵抗、外見コンプレックス、セクハラ・パワハラに耐えた経験、恋愛のこじらせ、様々な自分自身の「正しくなさ」に向き合い、捨てたいけれど捨てきれない自分をさらけだしながらも、フェミニズムと出会い一歩を踏み出しはじめたこと等が綴られている。そして「女をやっていく/女をやっていかない」にかかわらず、自分の人生を取るに足らないものだと思ったり、正しくないものだと恐れたりしながらも、開き直って自分の人生を肯定してほしいと読者にエールを送っている。

塀の中のおばあさん 女性刑務所、刑罰とケアの狭間で

塀の中のおばあさん 女性刑務所、刑罰とケアの狭間で

91/イ

猪熊律子/著

株式会社KADOKAWA

喜劇王、チャールズ・チャップリンは「監獄を見れば、その国の国民性がわかる」と言った。
日本では65歳以上の高齢女性受刑者の割合が30余年で10倍に激増した。刑務所の外の「一般社会」に居場所がなく、望んで繰り返し刑務所に入るために犯罪を犯す者も多く、「負の回転扉」と称されるという。
本書では、受刑者や刑務官へのインタビューなどから、「負の回転扉」にはまる原因や背景を考え、それをなくすための社会の在り方を探る。

女性達の声は、ヒットチャートの外に

女性達の声は、ヒットチャートの外に

15/ヒ

平井莉生/著 

ソウ・スウィート・パブリッシング

Billboard Japan 2022チャートTOP100の中に、女性アーティストは27組のみ。なぜこんなに少ないのか?
本書は、その答えを探るべく音楽・エンタメ業界の女性達30名にインタビューを行い、何を思い、どういうスタンスで活動してきたのか率直な声を並べることで、2022~23年における業界の景色や感覚を浮き彫りにしている。
チャートはまさに“社会を映す鑑”。そこにジェンダーギャップがあることが怖い。経済的支援をする側の選択が、機会の不平等を生むなら変えるべきである。また、アーティストが性自認を公表しているわけでもないのに、性別二元論が前提になっているのも、時代遅れだと著者は指摘する。
インタビューした女性達の発言内容にもジェンダーの課題が見えてきた。音楽・エンタメ業界だけではない、この社会に通じる著者の言葉をもとに、ジェンダーギャップの解消を考えていきたい。

これまでの経済で無視されてきた数々のアイデアの話 イノベーションとジェンダー

これまでの経済で無視されてきた数々のアイデアの話 イノベーションとジェンダー

67/キ

カトリーン・キラス=マルサル/著 

河出書房新社

本書では、経済が今までいかに男性優位の価値やルールに支配されてきたか、また女性のニーズが無視されてきたかを解説している。
例えば「重いスーツケースは男性が持つもの」「動かすのが難しいガソリン車は男が運転するもの」といった固定概念が、キャスター付きスーツケースや電気自動車の発展を遅らせたことなどを例に挙げ、ジェンダー観が発明やイノベーションの足枷となってきたと著者は語る。
ジェンダーを切り口にしているが、本書はまた同時に、私たちの周りに潜むアンコンシャスバイアスに気づくきっかけにもなるだろう。

魔法少女はなぜ世界を救えなかったのか?

魔法少女はなぜ世界を救えなかったのか?

05/ペ

ペク・ソルフィ、ホン・スミン/著 渡辺麻土香/訳

晶文社

私の魔法少女の一番古い記憶はサリーちゃんとアッコちゃんだ。子どもと観た「おジャ魔女どれみ」や「プリキュア」シリーズも懐かしい。
さて、思い出はともかく、不思議な力を持って戦う少女から、視聴者の女の子たちは何を受け取ってきただろう。華麗に敵を倒し、友人を助け、世界の平和を守る。そんな大仕事を、自分と同じような女の子がやってのけている。自分にもできるかもという身近さや、生きる自信かもしれないし、キラキラのかわいい衣装を見せられて女性性を上書きされたかもしれない。この二面性、かなり複雑だ。
さらに、そのキャラクターを作っているのは大人で、男性が大半で、そもそもビジネスの上で成立する存在であることを私たちは忘れがちだ。魔法少女、ディズニープリンセス、おもちゃ、ゲーム、アイドルなど、少女たちをターゲットにした数多のコンテンツが放つ相反するメッセージをどう受け取るか。本書はそのジレンマや問題点を洗い出す。