図書情報室

読書する女たち フェミニズムの名著は私の人生をどう変えたか

読書する女たち フェミニズムの名著は私の人生をどう変えたか

05/ス

ステファニー・スタール/著 伊達尚美/訳

イースト・プレス

フェミニストを自認する著者は、仕事で成功するという野心を描いて社会に出た。ところが、結婚し子どもが生まれたことで、人生に行き詰まる。仕事と子育てを両立する中で、自分を縛るものに苛立ち、自分のアイデンティティが揺らぐ。
そんな時、著者は学生時代に読んだフェミニズムの本を再読することで、自分の生き方を客観的に見つめ直し、自分の置かれた生活状況とすり合わせながら現実と向き合うことで前に進んでいく。
本書では多くのフェミニズムの著作が紹介されている。自分の状況に照らし合わせて前に進める1冊が見つかるかもしれない。

炎上CMでよみとくジェンダー論

炎上CMでよみとくジェンダー論

122/セ

瀬地山角/著

光文社

東京大学でジェンダー論の講義をしている著者は、メディアから炎上CMに関する取材を受けることが多いという。その中で著者は、女性を応援したつもりなのに、「性役割」の固定化・強化と受け取られたり、容姿や外見の面で「性差別」と受け取られる等、炎上CMには主に4つのパターンがあることを見出す。
入り口はCMだが、ジェンダー論の入門書になるように意識していると著者が述べているとおり、普段の生活の中でも、無意識に性別役割の固定を追認、強化するような言動をとっていないか、自分自身を見つめなおすきっかけにできる1冊。

PEN ペンno.497 2020  いまこそ、「ジェンダー」の話をしよう。

PEN ペンno.497 2020  いまこそ、「ジェンダー」の話をしよう。

05/ペ

CCCメディアハウス/編

CCCメディアハウス/発行

男性ライフスタイル誌『PEN』が、「ジェンダー」を特集した。これまで女性事と捉えられがちであった「ジェンダー」を多様性の視点で捉えなおし、生きる上で欠かせないテーマであると呼びかけたのだ。
「ジェンダーとは、性とは何か」という根源的な問いに始まり、男女格差の実態や同性婚の現状等の基礎知識や用語の解説もされており、これからジェンダーについて知りたい人も安心して読み進められる。
また、ファッションにおけるジェンダー観もビジュアルを用いているためわかりやすい。フォトグラファーのヨシダナギによるドラァグクイーンたちの写真は、この多様性の時代に「自分らしさとは何か」を考えさせてくれる。

マスコミ・セクハラ白書

マスコミ・セクハラ白書

74/マ

WiMN(うぃめん メディアで働く女性ネットワーク)/編著 

文藝春秋 

WiMNは2018年、テレビ局の女性記者に対する当時の財務省幹部のセクシャル・ハラスメント事件をきっかけに、メディアで働く女性達によって発足した組織である。本書は、WiMN会員34人のインタビューやコラムによって、マスコミ業界のセクシャル・ハラスメントの現状が多角的に語られている。
記者の一人は「長年のタブーを乗り越えて、ようやく議論の場に上がってきたセクハラ根絶の流れ。この流れを止めることなく、女性同士がつながることでこれからも発展させ守っていきたい。タブーだった時代にはもう戻らない。戻らせない。」と語る。仲間がいるという安堵感と行動するという意気込みが伝わる。

女であるだけで

女であるだけで

105 ケ

ソル・ケー・モオ/著 吉田栄人/訳

国書刊行会

夫フロレンシオを誤って刺殺してしまった主人公のオノリーナ。20年の禁固刑を受け収監されていたが、恩赦により刑務所を後にするところからこの物語は始まる。
メキシコ先住民のオノリーナは、スペイン語をあまり理解できず、読み書きも知らない。フロレンシオには、14歳の時に400ペソと靴1足、金のネックレスと引き換えに「買われ」、妻ではなく所有物であった。以来繰り返されたありとあらゆる暴力が、この恩赦を取り付けるために奔走した若き女性弁護士デリアとの接見により明らかにされていく。あまりに淡々と語られる痛みは壮絶で、想像力が追い付かない。簡単に分かった気にさせてくれないのだ。
女であるだけで、苦しみを受ける。暴力にさらされる。未だにそれを普遍と感じてしまうことも悔しい。これは、遠い世界のことではない。

草 日本軍「慰安婦」のリビング・ヒストリー

草 日本軍「慰安婦」のリビング・ヒストリー

95 ジ

キム・ジェンドリ・グムスク/著 都築寿美枝・李昤京/訳

ころから

漫画と文学を組み合わせた「グラフィック・ノベル」と呼ばれる表現方法を用いた本作は、太平洋戦争中、日本の植民地下におかれた朝鮮で、「慰安婦」として日本軍から性暴力を受けた朝鮮人女性の人生を描いたものだ。
「慰安婦」と聞くと、国家間の政治問題として捉えられることが多い。しかしこの物語を読むとそこには、基本的人権を傷つけられた、名前を持った一人の女性の生きざまがあることがわかる。「女だから」という理由で学校に通えず、強制連行により14歳で「慰安婦」となり、解放後も偏見の中、苦しみ生き抜いてきた女性の過酷な経験が、静かだが力強い筆圧で描かれ、圧倒される。
作中で、元「慰安婦」女性の身を削るような語りに、著者は葛藤する。語らせることは、「過去の傷をえぐり出す」ことに等しい。聞いてもいいのか、なぜ聞くのか、語りをどう受け止めたらいいのか。著者自身が自問自答する姿から、語り部が寿命を迎える今、記憶をどのように引き継ぐべきか、考えさせられる。そして、日本人としてどのようにこの声を聴くのか、問わずにはいられない。