図書情報室 図書情報室

100/ワ

早稲田文学増刊『女性号』

川上 未映子/責任編集

早稲田文学会

 例えば「作家」と「女性作家」を使い分けるように、あるモノやコトにわざわざ「女性」の一語を付けて語られることは、いまだに多い。その必要性に疑問を感じることもしばしばであり、文芸誌である早稲田文学が「女性号」と銘打って刊行されたことに、正直「なぜ今この特集か?」と感じたことは否めない。
 だが、巻頭言で編者は言う。「2017年現在における、ありとあらゆる分野における女性についての表現活動と諸問題を今号に網羅し記録しておきたい」と。「女性」と「書く」がどのような関係にあり、さらにそれらがどう読まれ、読まれないのか。「人間を書く」ことと「女性を書く」ことはどのように同じで、どのように違うのか。そして現在、女性の創作をめぐる状況はどのようにしてあるのか―。そんな動機で編まれた束幅3㎝超の本書には、内外の新旧さまざまなジャンルの作品がぎっしりと詰め込まれる。懐かしい作家に再会し、またお気に入りに加わる作品との出会いもあるだろう。秀逸な装丁も楽しみである。

73/ヨ

シングル女性の貧困 非正規職女性の仕事・暮らしと社会的支援

小杉礼子/鈴木晶子/野依智子/(公財)横浜市男女共同参画推進協会/編著

明石書店 

 近年「女性の貧困」は、様々な媒体で取り上げられるようになった。しかし、その内容は、シングルマザーや老後の貧困が定番であり、また、就業支援といえば、これらの層に加えて女子学生や子育て後の再就職、あるいは正社員女性のキャリアアップが対象となることが多い。だが、それ以外に所属する女性へ視点が抜け落ちているのではないか。本書は(公財)横浜市男女共同参画推進協会が中心となって、これまでの女性への就業支援の取り組みの中から浮かび上がってきた「若年層でもシングルマザーでもない非正規職の女性」という層にスポットをあてる。
声なき声を、丹念な調査研究を経て、世の中に向け、見えるようにする試みだ。支援の枠から取り残されたシングル女性の貧困という新たな視点から、ドラスティックに男性中心の企業通念や、働く場の意識を変えるきっかけとなることを期待したい。

81/ナ

漂流女子 にんしんSOS東京の相談現場から

中島 かおり/著  

朝日新書

タイトルの「漂流女子」とは、思いがけず妊娠し、相談先を探しながら孤立している女子のことを指す。筆者は妊娠した背景にかかわらず、妊娠している女性の戸惑いを受け止め、産む産まない、産むのであればどうやって育てるのか等、自身が納得して道を選択できるよう関係機関と連携しながらサポートを行っている。
本書に登場する女性たちのSOSの背景には、暴力や虐待、貧困等の日本の社会問題が潜んでいる
。彼女たちの多くは複数の課題を抱えながら社会資源とつながることなく孤立し漂流しているのだ。彼女たちが社会で孤立せず、力をつけ再び海に出ていくために、同じ社会を生きる私たちにできることは何なのかを投じている。

54/シ

御社の働き改革、ここが間違ってます! 残業削減で伸びるすごい会社

白河 桃子/著 

PHP新書

 政府の働き方改革実現会議で有識者議員を務めた著者が、「働き方改革」についての取材と経験のすべてをつぎ込んだ一冊。本書では、カルビー、大和証券、サイボウズ等、働き方改革の先端企業の取組とその成果から、働き方改革の実際を学ぶことができる。
 ある章では資生堂を例に、女性比率の高い会社では子育て支援に関する制度利用者が大量に出ることから、一部の人に負担がかかりすぎるという問題を指摘する。働きながら子育てする女性が一般的になった現在、これが無視できない生産性の低下につながっているからこそ、「男女の役割分担意識の解消」と「働き方改革」が、企業経営にとっても越えねばならない峠であることが分かる。
 女性も男性も、子どもを持つ人も持たない人も、すべての人が自分らしく働き、自分の時間をどう使って、いくらお金を得るのかを選択できる社会への一歩を踏み出すために読んでほしい。

100/ヨ 

アメリカ思春期文学にみる<少年の旅立ち> ―ハック,オズ,ライ麦畑,ゲド戦記から現代文学まで―

吉田 純子/著

阿吽社

アメリカの19~21世紀の代表的思春期文学における少年たちの描かれ方から、アメリカ社会に求められた男性性―その時代によって変化する「男らしさ」―がどのようなものであったのかを読み解く。取り上げられているのは、『ハックルベリー・フィンの冒険』『オズの魔法使い』をはじめ、私たちにも馴染み深い作品の数々である。未読の作品はぜひ、そして既知の作品も「男らしさ」とイデオロギーの関連に注目しながら再読したい。

43/ハ

ハタチまでに知っておきたい性のこと

橋本 紀子・田代 美江子・関口 久志/編

大月書店

ユネスコが中心となって開発した『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』をふまえた、子どもの頃から生涯にわたる性教育が、いまや世界標準となりつつあることをご存じだろうか。日本ではこうした教育の機会は少なく、国際的な動向から取り残されていると言えるだろう。この状況に危機感を感じた専門家達によって、性教育の重要性を若者に向け、わかりやすく説いた初版に、近年の社会動向を反映させ改訂を加えたのが本書である。本来、性は隠すものでなく、正しく理解して他者との関係性を学び、互いの人生を豊かにするためのものである。対象とする読者層だけでなく、今まで性について語ってこなかった、親の世代にもぜひ読んでもらいたい1冊である。