図書情報室

文系と理系はなぜ分かれたのか

41/オ

隠岐さや香/著

星海社

「文系」か「理系」の選択。学生時代にその二択を経験した人は多いだろう。この学問の区分けは、進路や職業にまで影響する。文系と理系はなぜ分かれたのか、この本では、著者の科学史家としての視点で鮮やかにその歴史が紐解かれ、分析されている。特に4章の「ジェンダーと文系・理系」に書かれた「ジェンダー役割とステレオタイプ」や「男性と言語リテラシー問題」における指摘は、今の日本が抱える問題の根源が見え、考えさせられた。
今から「文系」か「理系」の二択をする学生はもちろん、親世代にもぜひ読んでほしい1冊である。

エトセトラ Vol.1 特集 コンビニからエロ本がなくなる日

05/エ

田房永子/責任編集

株式会社エトセトラブックス

身近なテーマから「フェミニズム」を考える雑誌が創刊した。
出版社を立ち上げた松尾亜紀子氏は、大学でフェミニズムと出会ったことがきっかけで、幼い頃から感じていた小さな違和感(お父さんは何故家事をしないの?等)が、社会や文化の中の性差(ジェンダー)につながっていると気付いた。その違和感を「はっきりと言葉にしないと伝わらない」と覚悟を決め、2018年末、フェミニズムを前面に打ち出す出版社を設立した。(5/28読売新聞の記事より)
この創刊号では、大手コンビニが成人向け雑誌の販売を中止したことを受け、「コンビニからエロ本がなくなること」について、作家やエッセイストからの寄稿や一般投稿者からの意見が、大手コンビニ4社へのアンケートとともに記録されている。
これまで、コンビニに成人向け雑誌が置かれていたことに違和感を持ちつつも、声に出すことができなかった私たちが、この雑誌の出版により、社会や文化の中の性差(ジェンダー)について言葉にできる、また、考えるきっかけとなるはずだ。

地方を変える女性たち カギは「ビジョン」と「仕組みづくり」!

57/フ

麓幸子/著

日経BP社

本書は、日経ウーマンの元編集長である筆者が、様々な活動で地方を元気にしている女性17名をインタビューしたウェブサイトの記事をまとめたものである。産業や空き家問題といった地域の課題、コミュニティやまちづくり等、多様な分野で活躍する女性が紹介されている。
彼女たちの活動には、いくつかの共通項がある。ひとつは、多くの女性が「100年後」の未来のビジョンを語っているという「未来志向」であること。また「グローカル(グローバル+ローカル 地球規模の視野で物を考えつつ、必要に応じて地域視点で行動すること)」であることなど。
「地方創生」や「地方活性化」の専門家は圧倒的に男性が多い。しかし、女性の力を生かせば地方は変わる。性別にとらわれず、活躍する彼女たちの活動やパワーから、自分たちのまちをよくするためのヒントを見つけてほしい。

たてがみを捨てたライオンたち

101/シ

白岩玄/著

集英社 

仕事に行き詰まり専業主夫になるべきか悩む男性、妻の気持ちは分からないと割り切って離婚したものの孤独を感じている男性、女性に幻想を抱くアイドルオタクの男性。3人の男性の悩みや葛藤が描かれていく中に、ある女性から「男の人は他人より勝っていると思っているところを肯定してあげるとリラックスするの。」というセリフがこぼれ落ちてくる。いつも誰かに勝っていないと安心できないとは、なんと厳しい世界だろう。
本書は、男としての「たてがみ」をまとい、デキる男でなくてはならないという呪縛で、男性が窮屈に生きていることに気づかせてくれる。そしてあるべき男性像をなぞることに疲れてしまった彼らは、たてがみを捨てて、本音を話して生きたらどうなるかを考え始める。

今生きるのが苦しい男性たちに寄り添ってくれる1冊。

未来をはじめる 「人と一緒にいること」の政治学

30/ウ

宇野重規/著

東京大学出版会

政治思想研究者の女子中高生に向けた連続講義。人とのつながり、格差、働き方、選挙制度、民主主義等をテーマに、人と一緒にいることで生じる基本的な感覚から、政治を考える試みの軌跡である。
白眉は著者が「一番大切な回になる」と予告した第三講だ。スクールカーストという学校の日常を糸口に、著名な哲学者であるルソー、カント、ヘーゲルの言説と横顔を紹介し、思想とは、具体的な苦しみや悩み、要求から生まれるものであると理解させ「自由でありながら、人と一緒にいる方法」を自ら考え導き出すことの大切さを説いている。その過程で生じる高校生の真摯な問いが、さらに読者の思考を促してゆく。巻末の座談も面白い。
最後のメッセージとして、政治思想家ハンナ・アーレントの4つの言葉が紹介されている。著者が最も素敵だと思う言葉は「人間が生まれてきたのは始めるためである」だそうだ。あなたに響くのはどの言葉だろうか。

コロンタイ 革命を駆けぬける

05/ス

杉山秀子/著

論創社

ソ連といえば、世界初の社会主義国であるということ以上に私たちが知っていることはあまり多くない。コロンタイの名も、彼女が世界初の女性外務大臣となったことも。
ソヴェート政権の草創期、男女同権は社会の必須であり、国家保護人民委員(社会保障を担当する大臣)を命じられた彼女が相当な情熱と責任感を持ってその任を務めたことは想像に難くない。本書では、ソヴェート政権が目指した平等な社会において、男女同権を実現するために奔走したコロンタイが、どのような理論で母性と子どもの権利を守ったのかを明らかにする。
そして、彼女が手掛けた家族法-結婚や家族の在り方-の推移から、今日に至るまでのロシア社会の女性の置かれた状況はどう変わったのか、あるいは何が変わらなかったのかを知る。目指す男女共同参画社会実現への端緒としたいものである。