図書情報室

THE LAST GIRL イスラム国に囚われ、闘い続ける女性の物語

74/ム

ナディア・ムラド ジェナ・クラジェスキ/著

東洋館出版

サヴァイバー(生き残った者)とは、まさにこの人の事を指すのだろう。本著は、当時17歳のナディア・ムラド氏が、イスラム国(IS)の戦闘員に"計画的に"拉致され、性奴隷として何人もの男たちに"転売"されるという惨たらしい暴力を受けながらも、そこから脱出するまでの一部始終を語ったドキュメンタリーである。少数宗教のヤジディ教徒というアイデンティティや生まれ育った村、そしてナディアの家族が、徹底した暴力によって略奪、破壊される様子が詳細に書き綴られた証言録でもある。
生まれ育った小さな村、コーチョに美容院を開くことが夢だった17歳の少女に襲いかかった、過酷すぎる現実。ナディアがなぜこのような人生を辿ることになってしまったのか、本著のタイトル「最後の少女」に込められた願いとは何かを知れば、あらゆる世代、性別、文化の多くの人に読まれるべき1冊であり、遠く見知らぬ場所、自分とは関係のない人々の話ではないと納得できるだろう。ナディアはノーベル平和賞を受賞した際、こう語った。「受賞はうれしい。でも、私たちにとっては何も終わっていません。あの日の記憶は消えないし、ISも壊滅していない。何より人々が今も苦しんでいます」と。

説教したがる男たち

05/ソ

レベッカ・ソルニット/著 ハーン小路恭子/訳

左右社

タイトルを一瞥して「いる。そういう人」と思ったのは私だけではないだろう。かつて、子どもだった頃には、自らの未熟さと共に甘受できた。だが、そこそこいい大人になってからも度々、請うてもいない教えを受ける機会に恵まれるとは、どうしたことか?

この一見大した問題とは思えない事象が、実は、世界中に蔓延する女性へのあらゆる暴力の発露、いや暴力の構図そのものであると著者は言う。あまりにも多すぎる暴力を再確認し、しかし、あきらめずにそれと戦い続けようと思える、力みなぎるエッセイ集である。

「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を

05/オ

小川たまか/著

タバブックス

母子家庭は「ほとんどない」。男女差別は「ほとんどない」。性被害は「ほとんどない」。今の日本には、女性が生きづらくなるようなことは「ほとんどない」ことにされている。しかし、「ほとんどない」は「ない」と同じではない。

こんな事例がある。ある漫画家が、作品の中で女性の黒い服の流行を『中絶して喪に服しているから』と表現した。ちょうど国内で中絶を非合法化する議論がされている時だった。女性たちは、中絶の自己決定権は女性の権利であると作者に抗議し、その結果、彼は改めて漫画を描き直した。「本当はある」ことに気づけば、漫画の表現が変わるように、社会も変わるのではないだろうか?
本書は、女性の生きづらい社会事象を巧みに切り取り、分かりやすく「本当はある」ことを見せてくれる。そんなことは私の周りには「ほとんどない」。そう思う人にこそ読んでほしい。

女の子だって、野球はできる!「好き」を続ける女性たち

84/ハ

長谷川晶一/著

ポプラ社

「野球選手」といえば、男子小学生の「なりたい職業」で上位にくる職業の一つである。だが、女子にとってはどうだろうか。 小学生の間こそ、男子と同様に野球に打ち込んでいても、中学からは別のスポーツを選ぶ子がほとんどである。なぜなら、中学には女子野球部がまずないからだ。因みに、女子硬式野球部を持つ高校は、現在でも全国で30校足らず。京都府内でも3校しかない。男子が当たり前に持っている「好きな野球を続けること」も、ましてや「プロ野球選手」という夢も、女子には描くことさえ難しいのだ。現在、ワールドカップ6連覇中の日本女子野球。世界一のレベルであるにもかかわらずだ。 本書には、様々な苦難に立ち向かい、「野球が好き」という気持ちを胸に、道を切りひらいてきた女性たちの物語が描かれている。女の子が好きなことを続けていけるようエールを贈る、そんな一冊だ。

中学生の質問箱 性の多様性ってなんだろう?

YA/ワ

渡辺大輔/著

平凡社

本書は、中学生への質問という形式で、"多様な性"について、誰にでもわかりやすく丁寧にひもといていく。その組み立ては、ただ知識を得ることよりも一歩先に読む者を連れて行く。気付きを得ることで、性の多様性について読者も一緒になって考えていく。するとその道筋から、今まで素朴な疑問と思っていたものが実は偏見だったり勝手な思い込みだったりすることにまた再び気付いていく。
"普通ってあるのかな""自分にあてはめるとよくわかった"といった小さな疑問や感嘆とともに、LGBT等の性的少数者への理解を含む様々なテーマが、自分の引き出しにストンとおちていく。この、わかる、という醍醐味は中学生だけではもったいない。中学生よりもっと大人になった人にも、是非味わってほしい。

経済学者、待機児童ゼロに挑む

47/ス

鈴木 亘/著

新潮社

現在「待機児童」が深刻な社会問題になっていることは、新聞やテレビが毎日のようにこの言葉を取り上げることからも分かる。
待機児童問題をこのまま放置していては、日本の将来はない!と考えた筆者(共働き、3児の父、保育歴16年の経済学者)は、この世紀の大問題と闘った。ここに綴られた改革戦記は、すべて筆者の実体験に基づいて語られており、その点てまず説得力がある。
また、政府や自治体の実務にも携わった経験から、「自分たちに都合の良い現在の仕組みを何も変えたくない!」という既得権益を持つ人々との闘いの連続と言い切る筆者の言葉にもうなずける。
待機児童問題の真の原因は何か、改革戦記が炙り出す「真犯人」にあなたは驚愕するのではないだろうか?