図書情報室

事実婚と夫婦別姓の社会学

事実婚と夫婦別姓の社会学

63/サ

阪井裕一郎/著

白澤社

希望する夫婦が双方の婚姻前の姓を名乗ることができる選択的夫婦別姓制度について、法制審議会は、1996年2月に「民法の一部を改正する法律案要綱」を答申したが、改正は未だ実現していない。最高裁は、夫婦別姓を認めない民法の規定を「合憲」との判断を続けている。賛否があるのは当然としても、そもそも、それを考えるための材料が少なすぎる。夫婦同姓を当たり前と信じる大多数には、もっと丁寧な情報提供が必要ではないだろうか。
本書は、社会学の視点から、「事実婚」問題の歴史的変遷や、事実婚当事者の事例を紹介し、リベラルvs.保守 と捉えられがちな議論のもつれを解きほぐそうとする。夫婦別姓とはどういうことなのかを理解した上で、自分の意見を持ちたいものである。

「テレビは見ない」というけれど エンタメコンテンツをフェミニズム・ジェンダーから読む 

「テレビは見ない」というけれど エンタメコンテンツをフェミニズム・ジェンダーから読む 

122/テ

青弓社編集部/編著

青弓社

動画配信サービスなど様々なコンテンツが生まれている中ではあるが、テレビの影響力は今だに根強く、そこから発信されている情報や価値観は、私たちの中に無意識に刷り込まれているのだという事を改めて実感させられた。
本書では、バラエティ番組やドラマといったエンターテインメントを担っているテレビ番組に見られる、男性中心的な構造、マジョリティの特権性、性別役割の固定化・再生産、性差別、マイノリティへの無理解など、根強く残っている問題を様々なジャンルで活躍する書き手が読みといている。
フェミニズム・ジェンダーといった切り口だが、エンタメコンテンツの問題や可能性を、有名な番組の構成や芸能人の所作を通してイメージしやすい形で紹介されている。

女たちのポリティクス

女たちのポリティクス

33/ブ

ブレイディみかこ/著

幻冬舎

『女たちのテロル』で女性参政権を求めて闘う英国の女性たちを書いた著者が、近年活躍する女性指導者と世界の政治事情を解き明かす。
アメリカ初の女性副大統領となったカマラ・ハリス、ドイツのメルケル首相、コロナ禍で評価を上げたニュージーランドのアーダーン首相、台湾の蔡英文総統など、世界に台頭する女性政治家たちが、政治(ポリティクス)という究極の「男社会」をどのように上り詰めたのかを明快にし、その「ポリティクス」に迫る。
また、フェミニズムを利用して排外主義的な政策への支持を広げようとする「フェモナショナリズム」や、女性同士の連帯を意味する「シスターフッド」についての考察も興味深く、世界中で多くの女性指導者が生まれている背景に迫る。

みんな自分らしくいるためのはじめてのLGBT

みんな自分らしくいるためのはじめてのLGBT

76/エ

遠藤まめた/著

筑摩書房

トランスジェンダーである著者が、性の多様性について、友達、個性、恋愛、家族といった普遍的なテーマで、自らの体験や事例を交え、分かりやすく語っている。
「まわりのみんなと違っていること」や「当たり前」について悩んでいる人や葛藤する人は、LGBT当事者だけではない。性別やセクシュアリティなどの「違い」を超えて、まわりの人たちと共感できることがたくさんあることを知ってほしい。
LGBTだけでなく、自分が人と違うことに悩んでいる人たち、ひとりで難しい状況にいる人たちに、一緒に考え寄り添い励ましが届くような1冊。

女ともだち ガール・ミーツ・ガールから始まる物語

女ともだち ガール・ミーツ・ガールから始まる物語

102/ハ

はらだ有彩/著

大和書房

なぜ、女同士の繋がりは、軽く扱われるのだろうか。
「女」という要素が加えられることで、彼女たちの真摯さや深刻さが低く見積もられ、揶揄され消費されてはいないだろうか。
本書では、映画、コミック、児童文学などの様々な作品に登場する“女ふたり”の関係に眼差しを向け、それぞれの物語を辿ってゆく。彼女たちの関係性は多様で、友人、上司と部下、恋人、双子など言葉にできる関係もあれば、ひとことでは言い表せない関係もあるのだが、その一つ一つが特別で大切な関係だ。彼女たちが相手の姿を見つめる時、その視線は深く「個」に注がれている。一緒にいる時間の長さや距離に関係なく、“あなたがいるから、私は私の道を行く”という関係がそこにある。
彼女たちの物語が私たちの過去や未来と重なり、大切な人との名もない関係性を肯定してくれる。今必要とされるシスターフッドが息づく大切なエッセイ。

イラストで学ぶジェンダーのはなし みんなと自分を理解するためのガイドブック

イラストで学ぶジェンダーのはなし みんなと自分を理解するためのガイドブック

05/ゴ

アイリス・ゴットリーブ/著  野中モモ/訳 

フィルムアート社

ノンバイナリー(*自分を男女どちらの性別にも分類されないとする考え)を自認する著者が、カラフルでポップなイラストと言葉で、ジェンダーの多様性を紹介する一冊。「多様性」と聞くと、LGBTQの話題を連想しがちだが、本著はそこにテーマを限定しない。黒人男性の生きづらさ、女性の貧困、摂食障害、セックスワーク差別の問題……自由な生き方を阻む「こうあるべき」をほぐすヒントを、カテゴリーで区切ることなく、詰めこんでいる。
なかには馴染みのない話題もあるかもしれない。しかしそれは、まだあなたが出会っていない、社会の誰かの話かもしれない。自分でも気づいていなかった自分自身の話かもしれない。わたしもあなたも、誰もが自分らしく生きていい。「みんなと自分を理解する」という副題には、そんなメッセージが込められているように思う。