図書情報室 おすすめの本

04/シ

南北戦争のなかの女と男 愛国心と記憶のジェンダー史

ニナ・シルバー/著 兼子 歩/訳

 南北戦争といえば、アメリカにおける独立戦争、あるいは奴隷制度崩壊など、どこか日本からは遠い場所と時代の出来事と感じるのではないだろうか。しかし本書に散りばめられた、ヒロイズム、銃後の女性、愛国心などのキーワードから思い至るのは、「戦争の枠組」は日本の歴史を振り返っても変わらないことである。
 本書は、著者が依頼された歴史講座を基に、自身の研究に新たに考察を加え、深めたものとなっているが、著者は男性を戦争にかりたてるもの、あるいは戦争プロパガンダとしての女性など、戦争という局面での様々な社会の構造をジェンダーの視点から論考する。そしてこのように戦争への視点を、男性史、あるいは女性史の検証と位置付けるとき、読む者は、本書が論じていることが、いかに私たちにとって身近で、重要な問題であるのかに気づく。

08/タ

男子問題の時代? 錯綜するジェンダーと教育のポリティクス

多賀 太/著 

 男女共同参画を考える時に女性問題やジェンダー論は不可避であるが、そこに基づいて「社会的に力のある男性/弱者である女性」と断じる二元論では説明のつかないことも実は多い。そして、説明のつかない部分はすべて個人差や多様性という言葉で片付けてしまうのもいささか雑な話だと感じてきたが、この違和感を覚える方は少なくないのではないだろうか。現に、社会における男女の在り方に関しては様々な見解が入り乱れ、さながら異種格闘技かバトルロイヤルの様相を呈すると著者は例える。
 本書は、そのような今日の錯綜した状況を整理し、社会の進展のために生産的な対話が可能となる方向を示そうと試みるものである。大きくは男性学・男性性研究の視点から若い男性や男の子が抱える問題と、教育現場におけるジェンダー問題の扱い方の2方向から考察を進める。ジェンダー問題というと専ら女子の問題と思われがちであるが、西洋諸国では1990年代からすでに男子問題としての対策も講じられている。日本で棚上げされてきた男子問題に目を向けることで、説明のつかない違和感が解消されることを期待する。

33/シ

首長たちの挑戦―女性が政治を変える

女政のえん/編

「女性と政治」をテーマに開催されたリレートークに登壇した首長経験者の講演録。堂本暁子元千葉県知事(2001年~)、上原公子元国立市長(1999年~)潮谷義子元熊本県知事(2000年~)の3人がそれぞれ2期8年間の任期中に成した(あるいは成しえなかった)事々から共通して読み取れるのはリーダーであると同時に一人の生活者であるという視点である。女性障害者高齢者環境など、多岐に渡る問題に対し当事者を巻き込み住民主体にして役所はどうあるべきかに心を砕きいかに行動したかを読み進めるにつれ我々住民の側の多くがあまりにも行政に任せ過ぎていることに思い至る。"政治"は一部の人のモノではない主権は私たち一人ひとりにあるのだと再認識させられる1冊である。

41/ア

アクティブラーニングで学ぶジェンダー

青野 篤子/著

主に学生が、ジェンダーに関わる様々な課題を、自分自身の身近な問題として考えられるよう、アクティブラーニング(個人やグループで体験、実施する実習)という方法で学ぶことを提案している。   
セックスとジェンダーの違いといったごく初歩的な学びから、若者にも身近なデートDVといった12のトピックで構成されるなかで、特に興味深いのは、「キャリアと金融リテラシー」や「ワーク・ファミリー・コンフリクト」など、労働やお金にまつわる章である。これは日本社会での非正規労働者の割合が全体の4割を越える現在、学生の将来にとっても必要な知見であり、男女間の賃金格差といった性別による差別は、長年の未解決テーマでもある。本著を活用することで、単に講義を聴くだけではなく、ジェンダーの課題を実生活に引き寄せて考える学修(学習より能動的な学び)の機会となるだろう。

57/ハ

働く女子の運命

濱口 桂一郎/著


ジョブ(職務)=スキル(技能)に対して賃金を払う『ジョブ型社会』の欧米諸国と違い、日本は、「社員」を「入社」させ、定年までの間、異動も転勤も喜んで受ける「能力」と、企業へ忠誠を尽くす「態度」の積み重ねが査定基準になる『メンバーシップ型社会』である。長年そこでは、女性は出産や育児のため、男性同様に働くことは難しいと考えられ、重要な業務を任されてこなかった。
雇用機会均等法や育児休業法が整備され、働く女性・働き続ける女性、また育休を取る女性は増加した。しかし、育児をしていない人が育休中の仕事のしわよせを負うことになり、両者の溝が深まるという新たな問題も起こっている。これは個人対個人の問題ではなく、『メンバーシップ型社会』の問題である。
著者は、この日本独特の『メンバーシップ型社会』の形成された歴史的な経緯を解説しつつ、その働き方に疑問を投げかけ、男女共通の「限定のある新しい働き方」という発想の転換を示している。

78/ハ

学校・病院で必ず役立つ LGBTサポートブック

はた ちさこ ・ 藤井 ひろみ ・ 桂木 祥子/編著


今、教育や医療の現場にLGBTへの適切なサポートやケアが求められている。
さまざまな生きづらさを抱えるLGBT当事者は、日本では13人~20人にひとりいるといわれており、学校でいうとクラスに1~3人存在する。
本書は、特に青少年期の当事者をサポートするために欠かせない情報が盛り込まれており、看護・医療・教育の専門家や当事者、理解・支援者が、LGBTとは何か。どれくらいいるのか。どんな悩みがあるのか。いつごろ自覚するのか。具体的にどんな配慮が必要なのか、いじめを受けていると思われる場合どう支援すべきか...など、自ずと湧いてくる疑問に対応してくれる。