図書情報室 図書情報室

C/タ

弟の夫

田亀 源五郎/著  

 最近、LGBT(性的少数者を限定的に指す言葉。レズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(出生時に診断された性と、自認する性の不一致)の頭文字をとった総称)に関する新聞記事などを目にする機会が増えてきた。多様な性のあり方を認めようとする社会の変貌は好ましい。
 一方で、「社会」ではなく、「自分自身」または「自分の身の周り」となったとき、私たちはどのような態度を取れるだろうか。
 本書は、弥一と夏菜、父娘二人暮らしの家に、「弟の夫」と名乗るカナダ人のマイクがやって来たところから始まる。弥一の双子の弟は、カナダでこのマイクという男性と結婚していたのだ。
同性愛者への差別や偏見の目をまだ知らない小学生の夏菜は、1人の人間としてマイクと仲良くなっていく。一方、弥一は娘とマイクの言動から、自分自身が無意識のうちに抱えていた偏見に気づいていき、一緒に時間を過ごすなかで同性愛者への固定観念が少しずつ解けていく。
 ゲイ漫画家として海外でも評価が高い著者は、まずゲイという存在そのものについて、知ることからはじめてほしいという。そこから1人ひとりが考えていってほしいのだと。
 弥一といっしょにとまどい、考えていくことで、「誰か」のことではなく、「身近な自分のこと」として多様な性を受け入れ、理解が深まっていく、そんな作品である。

33/シ

子育て支援が日本を救う 政策効果の統計分析

柴田 悠/著

 これまで、財政上のお荷物と捉えられてきた社会保障。しかし本書は、「現役世代向けの」社会保障である子育て支援と就労支援のうち、特に子育て支援こそが「日本を救える」と、客観的なデータと緻密な統計分析を用いて提言をしている。現在の日本において、日本社会の労働生産性を高め、財政赤字を減らし、出生率を高め、自殺を減らし、子どもの貧困を減らすと期待できるというのだ。
 また、財源確保の一例として、相続税の課税対象拡大、資産税・所得税の累進化などを組み合わせた「小規模ミックス財源」を提唱。国民一人あたりの負担率を抑えることで国民の合意を得やすく、かつ十分に捻出可能であることを示している。
 本書でひとつ気になるのが、女性移民の労働活用が有効としている点。その場合、「外国人」であり、かつ「女性」という二重で弱い立場に置かれる可能性もあることから、差別や搾取に遭いやすく特別な保護が必要なことも十分に考慮されなければならないだろう。読んでおきたい一冊。

74/ト

ルワンダ ジェノサイドから生まれて

ジョナサン・トーゴヴニク/写真・インタビュー

1994年ルワンダで起こったジェノサイド(大量虐殺)。そこでは多くの女性が想像を絶する残忍な性的暴行を受け、約2万人もの「敵の子」が生まれた。彼女たちは家族や親戚から疎外され、精神的、経済的にも孤立し、深刻なトラウマを抱えながらも、母親として子どもたちを育てている。
写真に写るその表情や全身から、生き延びた「強さ」、生き残ってしまった「後悔」、子どもへの「想い」、様々なことを読み取ろうとする。が、こちらの浅はかな同情をまるで突き放すように見つめ返す姿に言葉は全く出てこない。彼女たちがなぜこの撮影に承諾したのか、インタビューで何を語っているのか、そして世界中の紛争や戦争の地で今なお、何が起き続けているのかを知ってほしい。2010年の出版だが、その写真が語る「ことば」は、尽きることはない。

03/フ

ハンセン病療養所に生きた女たち

福西 征子/著

全国各地の国立ハンセン病療養所に35年間勤めた医師が、青森市の療養所で今も暮らす79~90歳の5人の女性から、幼少期、家族と引き離された経験や結婚、社会復帰について聞き取りを行った。
自分の子を園外の施設に預けざるを得なかった女性は、『息子が赤ん坊のころも、それ以後も、「産んで良かった」と心底から喜ぶことはできませんでした』と語る。隔離被害の重さが伝わる一言である。また隔離で情報が制限され、戦後も家父長制的な発想を引きずった療養所の中は、全くの男社会であったという。自治会や全国的な組織化は男性が中心となり、女性は発言できない境遇に身を置かざるをえなかった。
ハンセン病という差別された集団内で、さらに弱い立場に置かれ続けた女性たちの言葉に、じっくり耳を傾けてほしい。

57/ト

女性が管理職になったら読む本―「キャリア」と「自分らしさ」を両立させる方法

ギンカ・トーゲル/著  小崎 亜依子+林 寿和/訳・構成

 世界のトップビジネススクールのひとつ"IMD"で長年教鞭を執っているギンカ・トーゲル教授による最新の調査研究結果をとりまとめ、日本の女性たちが直面している悩みや課題にフォーカスしたものが本書である。
 日本での女性のリーダーシップをテーマとしたディスカッションの中で、多くの日本の女性たちが「そもそも、リーダーになりたいと思っていない」ということに驚いた著者は、「諸外国と日本では女性の置かれる状況が、大きく違っていると思えた」という。
 本書では、個人の成功体験や失敗談ではなく、世界中で女性のキャリア支援を行ってきた経験と心理学や経営学をはじめとする幅広い研究結果を基に、「女性だけに立ちはだかる問題や課題はなぜ生じるのか」という課題の原因や背景を明らかにし、オーセンティック(真正の)・リーダーシップの重要性を説いている。
 いま、女性の活躍推進に向けた様々な取り組みがされている日本で、突然リーダーシップを発揮することを求められて戸惑う女性や、多くの課題を乗り越えて「自分らしい」キャリアを築いていきたいと願うすべての人のための価値ある一冊である。

05/カ

アクションを起こそう―女性、宗教、暴力、権力

ジミー・カーター/著 伊藤 淑子、千年 よしみ、釜野 さおり/訳

 1977~81年の4年間、アメリカ大統領を務めた著者は、退任後の人生を世界規模での人権擁護活動に費やしてきた。その活動により2002年にはノーベル平和賞を受賞もしている。
 本書には、子ども時代に経験したアメリカ南部における人種差別の実態にはじまり、海軍将校、農民、州知事、大統領と立場が変わりつつも、どのように人権擁護への意識を持つに至り、どのように活動したかが仔細に述べられている。そして偏見や差別、戦争、虐待、貧困、疾病といった人々の暮らしを困窮させるものが、女性と女児に不当に重くのしかかることに憤る。その問題は多岐にわたり、解決は容易ではないと感じさせられるものばかりである。
 だが、悲壮感ばかりでもない、それは本書を貫く著者の宗教者としての視点である。
実は宗教も多くの女性たちに困難を強いている大きな要因である。しかし著者は、それは既得権を手放せない男性宗教指導者らが、聖典の解釈を恣意的に歪曲しているからであると断言する。
いずれの宗教においても、女性を男性よりも劣った存在であると定める聖典はない。解釈は人の行為である。神や仏と戦う必要はなく、人と人の話し合いで変えられる。
 本来、宗教を信仰することと、男女が平等であること、女性が人権を希求することとは相反しない。本書では、どのような宗教の信者であれ、女性に対する差別が男女を問わず私たちすべてに害であることを理解し、これを是正するために今こそアクションを起こそうと呼びかけている。